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SilverRainファンサイト。船長(故)とその妹によるモーラット虐待系ブログ……ではないはず。
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「……」

大きなボストンバッグをどすんと下ろす。
長いような、短いような…修学旅行は終わりを告げた。
元々自分一人で住んでいた寮の一室だが、しばらく帰ってこないと何か違和感を感じる。
しっくり来ない、この感覚。

「もきゅー!」

留守番させておいたモーラットが飛び付いてくる。
胸に飛び込んできたモラを鷲掴みにして、ベッドに全力投球。

今日は、壁にぶつけるのはやめておこう。寂しかったのだろうし。

今回の修学旅行は色々あった。
特に、二日目の夜は。

修学旅行に行く、少し前。
あの少女に手紙を送ったのは、私からだった。
兄が守ろうとしたあの少女も、修学旅行に参加する学年だと気付き、更に同じキャンプに参加することが判明した。
気が付けば、私は手紙を書いていた。
あの少女にうっかり会って、話しかけられでもしたら、と。そう思い、手紙で予定を聞いた。
まだ、兄の死んだあの日の事について、心の整理が出来ていない……未だに出来ていない私は、彼女と話す事さえも怖かったのだ。


そもそも。
私は、死んだはずの兄が生きていたという事実だけでも受け入れ難かった。
兄が、誰かを守り、誰かの為に死んだ……なんて話は、更に。
私の兄は、中学で行方不明になり、そのまま死んでしまったのだ。
そう思っていたのだから。

この学園で、兄がどのように過ごしていたのか。
どんな生活をしていたのか。

私は聞きたくない。
聞いてしまえば、兄が死んだ事を認める事になるから。

認めるとすれば、これで二度目だ。

……

ともかく。手紙を送ったところ、彼女からの返答は予想通りのものだった。
「会って、話したい」と。

私には会えない。
私には話せない。

何度、そう書いて送ろうかと思った。
けれども。幾ら逃げようとしても、事実は後から追いかけてくるものだ。
広い学園とはいえ、能力者はその内の何割かだ。
何かの機会に、再び会うことになるだろう。

最大限の勇気を、振り絞った。
そうして、当日。
二人で見上げた星空には、揺らがぬ星が輝いていた。
横目で見た少女の頬には、涙が。
私の目に浮かんだ涙は、彼女に見咎められなかっただろうか。

まだ、面と向かって話せない。
だけれども、それは保留であって、絶対ではない。「まだ」なんだ。

揺らがぬあの星は、道を示してくれたのだろうか。
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