学園祭と夏休み（遥）

学園祭は終わりを告げた。

ガレージの面子は、当初の目的通り――とはいえ、一曲目は主役不在だったのだが――演奏を終え、バンドとしての活動をスタートさせた。

練習不足、打ち合わせ不足、そのほか諸々の不足。
なんとか二曲演奏できたのが、奇跡としか思えない。

そして、終業式。
能力者とはいえ学生だ。これから夏休みが始まる。
里帰りするもの、旅行に出かけるもの、クラブ活動に一層打ち込むもの、様々だ。

「ハルカは里帰りとかしないの？」
「……あんな家に戻るくらいなら、部屋に篭ってた方がマシだわ」
「そう言わないの。しばらくいないうちに、ご両親も頭が冷えたかもよ？」
「ふん」

昨日、両親から電話が来ていた事を思い出す。
半泣きになりながら、顔が見たいと嘆く両親に、写真をつけたメールを送ってやった。
週一で生存報告だってしているのに（やはりメールでだが）。

「やめとく。どこか、旅行にでも行くわ」
「ふうん。暇だったら連絡してよね、たまには皆で集まって騒ごう？」
「……まあ、考えておく」

空を見上げる。
雲の無い空に浮かぶ夏の太陽は、何一つ心配事の無さそうな級友に似て、少し眩しい。

自分が抱えているものは、ひどく軽いのだけれども。

「もきゅー？」
「……（無言でモーラットを蹴飛ばす）」
「きゅー！？」