SilverRainファンサイト。船長(故)とその妹によるモーラット虐待系ブログ……ではないはず。
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土蜘蛛戦争から半年。
もう、半年が経った。
十月一日。
土蜘蛛達は「教育」を終え、晴れて学園の一員となった。
少し見渡せば、ちらほらと一般生徒に見かけない顔が混ざっている。
あれは半年も前の事だったのか。
嫌な気持ちが心を落ち着かなくさせる。
理屈で分かっていても、理性で押さえ込もうとしても中々消えない、この感情。
しばらくは蜘蛛を見る度に感じるのだろう。
もう、半年が経った。
十月一日。
土蜘蛛達は「教育」を終え、晴れて学園の一員となった。
少し見渡せば、ちらほらと一般生徒に見かけない顔が混ざっている。
あれは半年も前の事だったのか。
嫌な気持ちが心を落ち着かなくさせる。
理屈で分かっていても、理性で押さえ込もうとしても中々消えない、この感情。
しばらくは蜘蛛を見る度に感じるのだろう。
さて、今日の授業も終わり、下校時刻となった。
担任のかったるい話を半分に聞き飛ばし、リュックに筆箱を放り込んで下校準備完了。
帰りはガレージにでも顔を出して、それから寮に戻ろう。
そう考えていた矢先、玄関にほど近い廊下で声をかけられた。
「茶渡・遥……くん、だな?」
高い身長、黒い長髪。
物憂げな瞳。
やけに真新しい銀誓館の詰襟に身を包んでいる。
私が訝しげな顔つきでいると、「ふむ」と顎に手を当て考え込む様子。
「……ああ、そうか。この場合、”ちゃん”付けの方が良かったのか」
「そんな事気にしてないわよ。何かしら、【土蜘蛛】の先輩」
男は軽く眉を上げ、控えめに驚きの表情を作る。
「ふむ。頭の回る子だ」
「簡単な類推よ?ヒントはその制服ね。まあ、当て推量と言った方がいいかもしれないけど」
「確かに、確かに。我々が学園の一員となったのは数日前だからな。怪しい者を見たら土蜘蛛と思え、と言った具合か?能力者の間では」
「……無駄話はいいわ。用件は何?」
男は軽く周りを見回して、一般生徒が増えてきたのを確認して言った。
「ここで話すのも何だ。世界結界とやらがうるさいからな、河岸を変えようではないか」
「下手な口説き文句ね」
「まだ現代の言葉に慣れてはいなくてな、すまん。それと拙――もとい、俺は【土蜘蛛】ではない」
「ふうん?」
靴を履き替え、玄関で男と合流。
「どこに向かうの」と聞けば
「こういう話をする時は、喫茶店などを利用すると教わった。故に、喫茶店へ向かう」との返事。
やがて、商店街の外れにある、古びた喫茶店へと辿り着いた。
「……喫茶店って、普通一般人だらけじゃないの」
「ああ、安心してくれ」
ぎぃぃ、と音を立ててドアを開ける。初老の男性(恐らく店主であろう)がコーヒーカップを洗っているところだったが、こちらに目線を向けると朗らかな笑みを返してきた。
薄暗い店内へと足を踏み入れる。数人の客。
「あの店主は巫女の家の出身でな。話は通してある」
「ふうん」
よく見れば、入り口には"Closed"の札が掛かっている。
「客も皆知り合いだ」
「……で」
アンティークな椅子に腰を下ろして、テーブルに頬杖を突いて言った。
「説明して貰いましょうか。私をこんなところに連れ出して、用件は何かしら?」
相変わらず物憂げな表情のまま、男はこちらに冊子を渡す。
「何よこれ」
「ここは喫茶店だ。まず、注文を選ぶんだ」
「~~~~!」
「顔が赤いな。風邪か?ならば、暖かい物が良い。ここの珈琲(発音:こうひい)は美味しいぞ」
「ちょ、ちょっと!いい加減にしてよ!?」
「何がだ」
「からかわないでっ!」
「からかってなどおらんが。ところで、珈琲には砂糖と牛乳を入れるのが好みか?」
「……もう、いいわよ。どっちもいらないわ」
「そうか。店主、珈琲を二つ」
テーブルに突っ伏す私。
この土蜘蛛(?)野郎のマイペース加減といったらもう。
「どうした、飲まないのか?」とか言うし。明らかに熱そうなコーヒーを一気飲みするし。
「はあ」
「元気が無いな。やはり風邪か」
「ああもう!いいから本題に移ってよ!」
「うむ。実はだな」
彼は話した。
半年前の戦争に参加していた事。
駅前で、その後屋敷で見かけた能力者の事を。
「ああ、つまり、私の」
嫌な予感は的中する。
コイツは死んだ兄の話をしているのだ。
嫌な気持ちが、心を満たす。
口の中がカラカラになり、苦い味がする。
「図書館の情報端末から、彼の縁者がいると知ってな」
「墓を参らせてくれはしないか、と。そう頼みに来たのだ」
「気持ちは分かる、とは言わぬ。だが、我々の一族も数多くあの戦闘で命を落とした」
「互いに不幸な出会いだった。せめて、参らせてはくれないか」
無言を貫く私に、淡々と語りかける男。
「鋏角衆、七臥の頼みだ。聞いてはくれないか」
「どうして……どうして、私の兄なの?他にも殺された人はいるじゃない」
「最期を見届けたからだ。それに――」
私は最後まで答えを聞かずに店を立ち去った。
七臥と名乗った男は俯き、私が残したコーヒーを見つめていた。
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「それに――俺が再び立ち上がる事が出来たのは、あの男のお蔭だからだ」
苦々しげに呟く。
コーヒーから昇る湯気が、所在なさげに揺らめいていた。
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