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SilverRainファンサイト。船長(故)とその妹によるモーラット虐待系ブログ……ではないはず。
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あれから数カ月。
遂に、二度目の大きな戦闘が……戦争が、行われる。

私は、初めてこの場所へやってきた。
兄の墓標。
鎌倉より程近い海岸に位置する、人気の無い岸壁に立てられた、石の墓標だ。

墓標にはこう書かれている。
「海を愛し、潮風と共に歩んだ男。その跡を記す」

遺言に従い、遺体は焼かれ、灰は海へと撒かれた。
この墓標に兄は眠ってはいない。海に還ったのだから。

盆も終わりだ。
もし兄の魂とかいうものがこの場所へ来ていたのなら、また海へと戻って行くのだろう。
兄が仏教徒だったのかは怪しいが。

私はブラックの缶コーヒーを墓の前に置き、花を添えた。
何の変哲も無い、一本の菊の花。
盆菓子は要らないだろう。甘い物は嫌いだったはずだ。
線香を立てる気には流石にならなかった。
先客が来たのだろうか、手作りの御守りとポストカードが並べてあり、更に花束が置いてある。
御守りとポストカードは、風に飛ばされないよう小さな貝を重石代わりにしてあった。

日光と潮風でくすんだ色合いとなった紺の軍服が、墓標にかけられたままになっている。
その墓標に背中を預けて、自分用に持ってきたコーヒーの蓋を開けた。
温い。その上、苦い。
やはり、ブラックは苦手だ。
付いてきたモーラットにも嫌がらせの思いを込めてコーヒーを飲ませる。意外にも、モーラットは平気な顔でコーヒーを飲み干した。
小さな手で缶を掴み、ごくごくと。
飲ませ続けたらそのうち体毛が黒くなるのではないだろうか。

潮風が心地良い。
暑い日差しが照り付け、額に浮かぶ汗を拭い取るように吹く風。

ゆっくりと時間が過ぎる。
私は何一つ、言葉を口にせずに座り続ける。
死者は甦らない。死者に言葉は届かない。
甦ってもらっては困る。兄のリビングデッドなど、見たくも無い。

気が付けば日の沈む時刻となっていた。
満ちた潮が、岸壁を洗う。弾けた海水が、やけに塩辛い風をこちらに吹かせている。


「もきゅ?」
「そうね。そろそろ、戻りましょうか」

軽くズボンを手で払い、立ち上がる。
日の落ちた空には、星が輝いていた。

「どうせ、届くはずもないけれど」
「もきゅー?」

海に向かって、大声で叫ぶ。

「ばぁーかっ」


さあ、日常に戻るとしよう。
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