SilverRainファンサイト。船長(故)とその妹によるモーラット虐待系ブログ……ではないはず。
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あれは俺が中学の時、丁度二年に上がる頃だったか。
俺はその、絵に描いたような優等生……というほどでもないが、似たようなものだった。
成績、素行、共に問題無し。
趣味は読書と水泳。
実に普通の、ちょっとガタイのいい中学生だった訳だ。
その時までは。
俺はその、絵に描いたような優等生……というほどでもないが、似たようなものだった。
成績、素行、共に問題無し。
趣味は読書と水泳。
実に普通の、ちょっとガタイのいい中学生だった訳だ。
その時までは。
俺は何故か図書委員だった。仕事中本を読んでも怒られないという理由だけで選んだのだが。
そんな図書委員の学年最後の仕事は、図書室での書籍の分類、整理。
破れた本を補修したり、処分したり、本棚を整理したりする。
そういった長い長い仕事も終わり、日も暮れた頃。
下校途中の俺の後ろに、ついてくる影。
ひたひたひた
ひたひたひた
冷静沈着に見える俺だが、実はかなりのビビリだ。
ホラー映画とか一人で見た日には、震える夜が待っているのだが……まあ、こんな時は振り返るしかあるまい。
振り返った俺が、街灯の薄明かりで見たのは、巨大で醜悪な、どこかで見た事のある化け物の姿だった。
巨体を揺らしながら、やけに小さな足でこちらの後ろを付いてくる。
そうして化け物は――ああいや、その化け物の顔がどこかは良く分からないのだが、顔と思しき部分をこちらに向けて
にやにやと笑った。
何をする訳でもない。危害を加える訳でもない。
只こちらを見て、にやにやと笑うのだ。
鞄を投げつけると、その化け物は素直に消えた。
それから毎日、化け物は夕方~夜にかけて現れた。
にやにやと笑う化け物が、あるときは背後に、家にいれば窓から、顔を見せない日はなかった。
いい加減慣れた頃に、今度は化け物が口を開いた。
「次は家族だぞ」と。
そうして今度は、げらげらと笑った。
次は、と言われても。何も危害を加えられていないのだが、それはそれで不気味な話だ。
さて、どうしたものか。
思考せよ。真の思考を。どこかの本で読んだその言葉が、脳に響く。
この化け物が、俺を選ぶ理由はなんだ?
こいつが現れた「きっかけ」はなんだ?
俺は、真夜中の図書室へ向かい――先日、図書整理で処分することになった段ボール箱の中から一冊の本を取り出して、化け物に突きつけた。
「これが、アンタか?」
化け物はげらげらと笑い、ぴたりと笑いを止めて言った。
「理解が遅いな、能力者」
「のうりょくしゃ?」
「さあ、本を破り捨てろ。次にお前を襲う化け物は、命を奪いに来るぞ」
両手を本にかけて――破るのをやめ、手を止める。
「……」
「どうした?」
「詳しい話を教えろ化け物。破るのはその後だ」
そうして俺は、本から飛び出た化け物と、夜中の図書室で話した。
能力者、ゴースト、降り注ぐ銀の雨の物語を。
「今のお前なら見えるだろう。夜空から降り注ぐ雨が」
常識を外れた物語を、非常識な舞台で聞かされた俺は……正直、外を見れば見えてしまう気がした。銀色の雨が。
――――
数日後、俺は家を飛び出した。
傍らには一冊の本。
「……これで、家族は安全か?」
「安全というものはない。只、お前が居なければゴーストに襲われる確率は減る。それだけだ」
――――
……シリアスは疲れる。
で。えーとだな、その後は
世界中を旅し(主に密航)
技を磨き(拳士としての資質があったらしく、炎狐の技術は、旅の途中怪しい坊さんに教わった)
最後に本を破いて、俺は学園の門を叩いた。
最後のページにあった本の著者と、学園の関係者の名字が一致しているという事実だけを頼りに。
そんな図書委員の学年最後の仕事は、図書室での書籍の分類、整理。
破れた本を補修したり、処分したり、本棚を整理したりする。
そういった長い長い仕事も終わり、日も暮れた頃。
下校途中の俺の後ろに、ついてくる影。
ひたひたひた
ひたひたひた
冷静沈着に見える俺だが、実はかなりのビビリだ。
ホラー映画とか一人で見た日には、震える夜が待っているのだが……まあ、こんな時は振り返るしかあるまい。
振り返った俺が、街灯の薄明かりで見たのは、巨大で醜悪な、どこかで見た事のある化け物の姿だった。
巨体を揺らしながら、やけに小さな足でこちらの後ろを付いてくる。
そうして化け物は――ああいや、その化け物の顔がどこかは良く分からないのだが、顔と思しき部分をこちらに向けて
にやにやと笑った。
何をする訳でもない。危害を加える訳でもない。
只こちらを見て、にやにやと笑うのだ。
鞄を投げつけると、その化け物は素直に消えた。
それから毎日、化け物は夕方~夜にかけて現れた。
にやにやと笑う化け物が、あるときは背後に、家にいれば窓から、顔を見せない日はなかった。
いい加減慣れた頃に、今度は化け物が口を開いた。
「次は家族だぞ」と。
そうして今度は、げらげらと笑った。
次は、と言われても。何も危害を加えられていないのだが、それはそれで不気味な話だ。
さて、どうしたものか。
思考せよ。真の思考を。どこかの本で読んだその言葉が、脳に響く。
この化け物が、俺を選ぶ理由はなんだ?
こいつが現れた「きっかけ」はなんだ?
俺は、真夜中の図書室へ向かい――先日、図書整理で処分することになった段ボール箱の中から一冊の本を取り出して、化け物に突きつけた。
「これが、アンタか?」
化け物はげらげらと笑い、ぴたりと笑いを止めて言った。
「理解が遅いな、能力者」
「のうりょくしゃ?」
「さあ、本を破り捨てろ。次にお前を襲う化け物は、命を奪いに来るぞ」
両手を本にかけて――破るのをやめ、手を止める。
「……」
「どうした?」
「詳しい話を教えろ化け物。破るのはその後だ」
そうして俺は、本から飛び出た化け物と、夜中の図書室で話した。
能力者、ゴースト、降り注ぐ銀の雨の物語を。
「今のお前なら見えるだろう。夜空から降り注ぐ雨が」
常識を外れた物語を、非常識な舞台で聞かされた俺は……正直、外を見れば見えてしまう気がした。銀色の雨が。
――――
数日後、俺は家を飛び出した。
傍らには一冊の本。
「……これで、家族は安全か?」
「安全というものはない。只、お前が居なければゴーストに襲われる確率は減る。それだけだ」
――――
……シリアスは疲れる。
で。えーとだな、その後は
世界中を旅し(主に密航)
技を磨き(拳士としての資質があったらしく、炎狐の技術は、旅の途中怪しい坊さんに教わった)
最後に本を破いて、俺は学園の門を叩いた。
最後のページにあった本の著者と、学園の関係者の名字が一致しているという事実だけを頼りに。
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