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SilverRainファンサイト。船長(故)とその妹によるモーラット虐待系ブログ……ではないはず。
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……兄は留守にしている。

明日だって、明後日だって、ずっとずっと、兄は留守のままだ。


ボクが小学生のとき、兄は家出した。
家に不満があったようには見えなかった。書き置きには「世界を見てきます」とだけあった。
それからずっと、兄は留守のままだ。

初めは両親も大騒ぎだった。
行方不明の届出を警察に出したり、近所にビラを配ったり。
八方尽くして探しても音沙汰は無く、やがて時が経ち涙も枯れると、兄の話題は禁句になった。

誰も入ろうとしない兄の部屋には、埃の被った船の模型。

一人娘になったボクに、両親は兄の分も手をかけた。
欲しいものは何でも買ってもらえたし、ワガママだって聞いてもらえる。
でも、その分重荷も背負う事になった。ああ見えて成績の良かった兄の代わりに、進学校へ行くことを期待された。
毎日毎日、途切れる事の無い過保護な両親の干渉。
行き過ぎた愛は狂気のようで、それに応えようとするボクの心と身体は悲鳴を上げた。

そんなある日、ボクの目の前でぬいぐるみが燃えた。
兄から貰った小さな熊のぬいぐるみはめらめらと燃えて灰になり、そんな火を見つめてボクは綺麗だなって思った。
どうしてかは分からないけれど、火は周りを巻き込むことなくぬいぐるみを燃やし尽くした。
燃え残った灰から顔を出したのは、真っ白でふわふわでもこもこな……なにか。
とりあえず、見つからないようベッド下に隠した。

数日後、担任の先生が進路の話をしたいといってきた。
「銀誓館学園」――小中高一貫、鎌倉にある私立(たぶん)学校。
全国テストの成績を見た担任の先生が、特待生として編入できることを教えてくれた。
寮があるので、親元から離れて暮らすこともできる、と付け足して。
両親も渋々ながら転校を認めてくれた。
寮での生活も、担任が上手くごまかしてくれたおかげで可能になった。

こうしてボクは、学園に編入した。
学園へ向かう電車で、ボクはぬいぐるみが燃えた原因を知る事となる。
能力者――詠唱兵器――ゴースト。
そしてもこもこの白いものの正体。

学園に入ってからしばらく経った3月、図書委員をやってたクラスメイトがこんな話を持ってきた。
「ハルカってさー、珍しい苗字だよね。私、この間同じ苗字の人見たんだ。年度末だから、貸し出した本の伝票整理をしていたんだけど」
「どんな本?」
「文庫本で、白っぽくてー、船の絵が描いてあったけど……どうしたの、ハルカ。顔色が悪いけど」

兄がこの学園に居る?
そんな、冗談みたいな事があってたまるか。
私は引きつった笑いを返した。

「あー、気になるなら図書館に行って調べてみたら?端末から、学生名簿が検索できるはずだから」
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